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第60回 関西広報100研究会 レポート:SDGsを広報に
世界、そして大阪が注力するSDGsを広報活動に取り入れるには? 成功事例、失敗事例、記者の視点を徹底分析
2022年2月9日、ミライフの西山が代表を務める、関西広報100研究会が開催されました。なんとこの日で、60回目の研究会!2015年から継続している広報研究会です。
今回は、大阪のコワーキングオフィス、オギャーズ梅田との共催イベント。オフィス拡張に伴い、セミナーをするスペースができたばかりという、ホヤホヤのきれいなオフィスをお借りしました。
いつものように、まずは研究会の紹介や活動の意義を確認します。広報担当者は社内でも人数が少なく、試行錯誤しがちですが、成功や失敗を共有すれば、他の広報さんの力になります。研究会では必ずメディアをお呼びするので、ネットワークの広がりにもなります。
関西広報100研究会の”100” は、研究会が単発のものではなく100回の開催を目指したいねと名付けられました。もう60回なので、夢ではないかもしれません。100人の会員が集まりたい、100人のメディアと知り合いたいという意味もありますが、累計人数はすでに100を超えています。今後も、知恵と技を共有し、関西企業の魅力を発信していきたいですね。
2021年度、コロナ禍にも関わらずアクティブ!
昨年、隔月で6回の研究会が開催されました。新人広報向け、経済部と社会部の違いなど、様々なテーマです。合同記者発表会は、多くの記者さんが参加されて、取材やメディア掲載につながったという例が多数報告されました。2022年度も、また開催予定です。
SDGコンサルタント、プロからの説明
オギャーズ会員で、偶然にもSDGsのプロがいらっしゃり、SDGsとは何か、最近の動向とはという全体像をお聞きすることができました。EMIELD株式会社(エミールド)の代表取締役、森優希様です。企業が社会課題の本質を捉えながら経営できるよう、伴走しておられす。
森様より講演
企業がSDGsを取り組む上で大切なことは「社会性」と「経済性」の追求です。しかし、実際はどちらかの思考に偏るケースが多いです。
「社会性」の面では、会社を取り巻く社会課題の真因と向き合うことが重要です。たとえば、プラスチックは途上国の輸出問題や焼却問題などいくつかの社会的課題の側面があります。しかし、手段だけが注目され、何が真因か議論されることがないケースが多く見られます。自社において、どのようなプラスチックを使い、どう焼却しているかによって対策が変わります。課題を正しく認識すると、やるべきことが変わる可能性があるのです。
「SDGsウォッシュ」という表現もあり、環境に良いと見せているだけで、真に取り組んでいないと批判される動きも出てきています。より本質的な取組が求められます。
「経済性」としては、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)が重要です。事業活動を続けることで、社会課題の解決につながるビジネスモデルの構築が必要です。「社会性」と「経済性」の両方を追求することで、売り手よし、買い手よし、世間よし、“未来よし”の4方よしを実現できます。
参加者からの質問: 企業がSDGsウォッシュと見られないように、どう取り組むべきでしょうか?
回答:昨今、内閣府からの指針に基づき、地方自治体が主体となり、SDGsを評価する動きもあります。それらの評価基準や日本のSDGs実施指針もふまえ、私たちが取り組むゴールと具体的なターゲットを決め、定量的な目標をもち、取り組みをすると良いでしょう。
質問:広報の視点から、対消費者・対投資家に向けてどのように企業からSDGsを開示すべきでしょうか?
回答:消費者には、事業を通じてどのような課題解決をしているか課題的ないインパクトを可視化して提示すればよいでしょう。投資家向けはガイドラインに則って報告や開示をしましょう。企業のサステナビリティの取組や目標を開示したサステナビリティレポートの制作が必要です。それを通じて、企業のESG情報は投資家が直接参照するだけでなく、ESG評価機関によって加工された、二次情報のカタチでも利用されています。参考:ESG情報開示実践ハンドブック
企業のSDGs広報事例①:一貫したメッセージを、言い続ける
次に、株式会社ウィファブリックの広報、藤本恵子さんから企業から広報事例を紹介いただきました。同社は、「服の廃棄課題を解決するために創業された会社」です。運営するスマセルは、アウトレットモールのオンライン版で、現在16万名の顧客がいます。「お得に買って、地球を守る」をコンセプトに、お客様が買った服によって何グラムCO2削減になったかを公開しています。削減だけでなく森林栽培に寄付することで還元しています。
ウィファブリック社は、新聞やテレビなどで何度も紹介されています。広報の藤本さんは、広報をする上で大切にしている3つのポイントを挙げられました。
- 一貫性:業界・社会のどこに課題を感じ、誰のどの部分(何)を解決しようとしてるのかを、わかりやすく簡潔に、一貫したメッセージとして伝える事。例えばつくりすぎてしまったものをどうするか、出口は何かを、訴えかけています。
- 継続性:言い続けることが大切。全てのプレスリリースに、持続可能性、サスティナブル、廃棄ロス、気候変動、SDGsなどの言葉を入れています。そうすることで、「服の社会課題解決ならスマセル」と言ってもらえることを目指しています。
- 狙いを定める:誰に見てもらい、どんな行動・感情を起こしてもらいたいか?の目的を明確にします。スマセルの場合、企業様に対しては、「アパレル業界に持続可能性に取り組むきっかけにしてほしい」、お客様に対しては「スマセル及びファッション業界の環境を知ってほしい」ということです。
これらを抑えつつ、ウィファブリックでは、SDGsの取り組みを月一本発信し続けて、これまでに下記の成果が得られました。
日本初の取り組み「アパレル廃棄におけるCO2量を可視化」で、11記事掲載
例:朝日新聞 ”捨てられる服の運命を変える 星空を思い浮かべて”
日経クロストレンド”「アウトレット服まとめ買い」ECが会員10万人突破 SDGsの妙手”産学連携企画で、5記事掲載
掲載後、通常の5倍の流入・問い合わせあり
yahoo!ニュースから、テレビ放映につながったことも
採用時に応募者からの反響もあり、社内でも効果を理解されるようになりました。SDGsも様々な分野がありますが、この問題についてはこの会社だと詳しいとメディアに思ってもらうことが大事です。
企業のSDGs広報事例②:メディアが求める情報、トレンドキーワード、ビジュアル
もう一人の事例紹介は、日本PCサービス株式会社の広報、 沖祐生 様です。デジタル機器の有料サポートサービス利用率No.1の会社です。DX化が進む世の中で、IoT機器、ホームネットワークのJAFを目指しています。プレスリリースは直近2年間で、10日に1本配信し、新聞、雑誌、WEBメディアに多数掲載されています。
SDGsに関わる広報活動として、二つ紹介されました。
- 児童養護施設へ学習機器の寄付・設定設置:「質の高い教育をみんなに」を目指し、2020年から継続して児童養護施設にパソコンやタブレット機器の寄付を行っています。きっかけは、GIGAスクール構想(教育現場でのPCやタブレット端末を一人一台使用)が、コロナ禍で促進されたものの、養護施設で暮らす児童たちには機器不足が問題と社員が聞いたことから始まりました。そこで、自社だけでなく、学習ソフトを制作している会社の協力も得て寄付を実現しました。広報的には、児童養護施設の子どもの写真を出すことはできない。見せるものがないと、テレビや新聞等には掲載されにくいという課題が出てきました。ただしネットメディアには、子ども達の直筆の手紙を掲載してもらうことができました。
- LGBTQに関する取り組み:「ジェンダー平等を実現しよう」のために、LGBTQ(性的少数者)に関する社員研修を始めました。パソコンやスマホの修理の際、自身の情報を見られることを恐れた消費者が、依頼ができないという声があったからです。そこで、LGBTQに関する研修を行う一般社団法人「CialFrame」が、講師とLGBTQの当事者2人を日本PCサービスの大阪本社に派遣し、東京など各地の店長も参加して、研修を実施しました。これを2021年2月にリリース発信したところ、日経新聞の社会部記者様からSDGsの取り組みに興味ありということで、日経新聞夕刊・WEB(2021年・5月)に掲載となりました。リリース時期から掲載まで時間が空いたのは、社内研修実施後、受講者に知識が浸透したかという結果や、コメント、研修時の写真、講師の方の声も希望をされたためです。
沖さんより、掲載につながるためには、下記が大切ですとのまとめがありました。
メディアの求める情報を提供する
トレンドキーワードをおさえる
掲載イメージしやすいビジュアルの提供
参加者より質問:児童養護施設など、情報を開示したくないような課題をキャッチするのはどうやったのですか?情報源はどこですか?
回答:毎月10回くらい、広報できる情報がないか他部署に聞いています。社内でも、機会あるごとに言い続けるようにしました
質問:機器の配布については、事前に発信したのですか
回答:事前・事後両方発信しました。予告と報告で、2回チャンスがあるので、せっかくなら生かしたいですね。
参考:児童養護施設への学習用機器提供の予告、施設の従事者や子どもたちからの声の報告
採用広報・ブランディングにおけるSDGs
このほか、社会課題への対応に敏感な企業と大学生との就活サービス「エシカル就活」を運営する株式会社Allesgoodの代表取締役CEO 勝見仁泰様にお話いただきました。Z世代(1990年代半ばから2010年位までに生まれた層)は社会課題へ関心が高くなっています。実際、2割以上の大学生が、企業選びでSDGsの取り組みを重視しているのですが、企業のサステイナビリティへの考えや行動が学生に届いていないことがあります。
そこで、同社では、厳選されたエシカル企業に学生が出会えるプラットフォームを提供し、社会課題カテゴリで企業を検索サービスや、企業の取り組みを紹介するWebメディア運営を行っています。企業は、採用ブランディングの向上やエシカル就活へのビジョン共感などに役立てています。集まってくる学生は、行動力があり、留学経験がある優秀な学生が多いそうです。
最後に、大手新聞社の社会部記者からもメディア側からの有益なお話を頂きました。SDGsに関して、理解がかなり深まり、広報で活用できる可能性の広がりも強く感じることができた研究会でした!
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