“現場感覚”を大切に!フランスで考えた、物語とマーケティング戦略の関係

2025年6月、ヨーロッパ最大のスタートアップイベント Viva Technologyに参加するためフランスに行き、パリ、コルマール、ストラスブールの3つの街を訪れました。人を動かすストーリーや場のつくり方など、PR・マーケティング視点での色々な発見をご紹介します。

賑わうパリに定着するもの、変わるもの

viva technology 2025全景
Viva technology 2025の様子。熱気あふれてました!
VIVATECHでの記念写真
VIVATECH 2025には、ミライフ西山と森が参加しました

パリは相変わらずの賑わい、いつでも刺激の多い街です。しかし、ホテルがお高い。。。! パリ開催のViva Technologyに毎日通い、日本のスタートアップのご支援に勤しみ、世界中の最先端イノベーションに触れてきました(Viva Technologyについては、ミライフの別ブログでレポートします。昨年のVIVATECHレポート記事はこちら)。

お米が恋しくなると、パリ市内ならどこにでもある(しかも美味しい)中華デリに駆け込み、チャーハン&餃子をテイクアウトして食べました。一度だけ、日本米が食べたくて「おむすび権兵衛パリ店」に行きましたが、長蛇の列で買えず。。。日本のデパ地下で買えるような、海外とは思えない最高のおにぎりを、ウキウキして買いに行ったので残念でした。並んでも食べたいほど、地元の方々からも人気があるんですね。

日本の食材では、やはり「MACHA/抹茶」フレーバーが人気。飲み物・デザートなど色々見かけました。昨年のパリでは「MOCHI/モチ」スイーツを何度も見つけたのですが、今年は発見できず。。。食のトレンドは移り変わりが激しいですね

書店では日本のMANGA/マンガコーナーが大充実。バンド・デシネ(フランス・ベルギーのコミック)を凌駕するスペースに陳列され、新作が続々翻訳・出版されていました。日本のコンテンツが生活に根付いていることを実感しました。

おむすび権兵衛パリ店の行列
週末のお昼時の「おむすび権兵衛パリ店」、店舗の周りを囲み、さらに2軒隣の店まで続く行列でした。
パリの書店の漫画売り場
MANGAの棚は、どの本屋にもあります。SHONEN(少年マンガ)とSEINEN(青年マンガ)に棚分けしてる書店も多く、とにかく広いスペースで陳列されています。

コルマール:“行きたい”を生むストーリーの力

アルザス地方のコルマールは、中世そのままの木組みの家の街並みがロマンチックな大人気観光地です。スタジオジブリ『ハウルの動く城』の舞台のひとつでもあり、日本人が「ここがハウルに出てきた家だよ!」と語りながら歩く姿も珍しくありません。かくいう私も「”ハウル”のあの街に行きたい!」という動機で、パリから2時間半かけて行った訳です。いわゆる”聖地巡礼”ですね。

アルザスらしい木組みの街並み、花が咲き乱れる美しい街。
アルザスらしい木組みの街並み、花が咲き乱れる美しい街。
コルマール、プフィスタの家
ハウルとソフィが空中散歩する映画冒頭のシーンで、このままの姿が描かれている「プフィスタの家」

帰国便で読んだ機内誌コラムで、”聖地巡礼”のような映画やアニメの舞台となった場所を訪れる旅をする人を、英語では“Set-jetter/セット・ジェッター”と言うことを知りました。──ジェット機で世界中を頻繁に旅行する”Jet-setter”をもじった言葉です。例えば、『ロード・オブ・ザ・リング』の舞台となったニュージーランドでは2000年代に観光客が40%増加。最近ではドラマ『ホワイト・ロータス』の影響で、ハワイ・マウイ島のホテル予約が50%も増えたそうです。

この“Set-jetter”や“聖地巡礼”は、非常に強い動機のある消費行動です。映画やアニメの舞台を訪れることで、そのIP(キャラクターやブランドなどの知的財産)への愛着がより深まり、SNSシェアや商品購入につながっているのです。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのようなテーマパークも同様のビジネスです。パリではディオールやルイ・ヴィトンなどのラグジュアリーブランドが美術館を運営、アートを通じてブランドの世界観を深く体験させていました。これも、美術館での感動をブランドへの共感に転換していく活動です。

共通点は、消費者がストーリーへの共感や耽溺、憧れを起点に、リアルな場を訪れたり商品を購入したりする具体的行動を起こすこと。ストーリーを起点に感情から体験へとつながる仕組みが、現代のマーケティング戦略の一つの核になっているのだとあらためて感じました。

ストラスブール:異世界と現実が共存する街

アルザスの州都ストラスブールは、ドイツとフランスの文化が混ざった独特の雰囲気の大都市です。15世紀に建てられた巨大なストラスブール大聖堂(ヨーロッパで最も高い塔を建設したそう)を中心とした美しい街は必見です。

今回、コルマール・ストラスブールと旅してみて、このアルザスの街並みは、ジブリ作品だけでなく、日本で流行りの「異世界転生もの」の風景そのものだと感じました。また、ストラスブール歴史博物館の展示にあった騎士の鎧や武器は、「ドラゴンクエスト」や「スカイリム」など人気のファンタジーRPGゲームそのままの雰囲気でした。つまり、これらの作品は、ファンタジーの世界を示す“記号”として、中世のヨーロッパを描いてるということなのでしょう。

ストラスブールでは欧州議会の見学もしました。私にとっての“異世界”である中世的な街並みで数日間を過ごしたあと、欧州議会の現代的なビルに入った瞬間、「これこそ私の世界だ」と強烈な安心感を覚えました。また、厳重な荷物検査や身分証登録はあるものの、事前予約なしで誰でも入場できる仕組みになっており、「開かれた場所」としての理念が施設の設計・運営に反映されていることも印象的でした。

ストラスブール歴史博物館の武器の展示
鎧や大剣、片手剣、槍など中世の武器。ストラスブール歴史博物館にて
ストラスブールの欧州議会の外観
欧州議会の外観。カッコいい建物でした!

人々の記憶や感情に刷り込まれた“共有された記号”や、その象徴性を活用することで、物語や商品が広く共感を得るだけでなく、政治的理念の浸透すら可能になる——そんな強い力を実感しました。だからこそ、このような手法を使うときにはその影響の大きさ、方向性について慎重であるべきです。

ブランドやコンテンツの世界観を設計したり発信したりする際には、人々の無意識に働きかける力があることを忘れず、誠実に向き合いたいです。

感情に働きかけ、記憶に残す──マーケティング実務へのヒント

旅先では、新たな文化、ブランドの新たな側面など新鮮な体験が数多くあります。今回のフランス滞在でも、ストーリーや記号が人の記憶や感情に働きかける仕組みを、色々な場面で実感できました。

ソフトパワーを活用しストーリーや体験を通じて価値を届けるマーケティング戦略は、すでに幅広く実践されています。そのような戦略設計には、人の記憶や感情、つまり顧客インサイトの深い理解が欠かせません。

今回の旅のように、体験して感動した”現場感覚”に基づく顧客理解や戦略提案は、ミライフがいつも大切にしていることでもあります。今後のミライフの活動や支援においても、こうした現場での体験を活かしていきたいと思います。

ストラスブールの全景
ストラスブール大聖堂の展望台からの風景

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