日本初のスマート製造業の国際展示会 参加レポート「SMART MANUFACTURING SUMMIT」@愛知
ミライフでは、会社や製品のブランドを強くする多様な戦略やマーケティング・PR手法を提案し、ともに実行することで、BtoB、スタートアップやベンチャー企業などをご支援しています。未来につながる提案をできるよう、最新のビジネス動向を幅広くウォッチしており、昨年もミライフ代表の西山と森で、ヨーロッパ最大のテック&スタートアップ見本市「Viva Technology 2023」に参加するなど、積極的に見聞を広めています。
今回のブログでは、2024年3月にミライフ森が参加した、最先端技術の国際展示会「SMART MANUFACTURING SUMMIT」(以下、SMS)についてご紹介します。
日欧の製造業・モビリティの展示会で”最新”を知る
SMSは日本初のスマート製造業総合イベントとして、2024年3月13〜15日にAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催されました。主催はフランスのイベント会社GL events Venues、愛知県をはじめ、日欧産業協力センター、在日フランス商工会議所などが全面協力している日仏政府の公認イベントです。
愛知の企業やスタートアップが出展する「愛知県 ゾーン」、欧州各国やフランスの地域圏の企業が参加する「日欧産業協力センター ゾーン」「国・地域 ゾーン」、テーマ別に企業ブースが並ぶ「モビリティ ゾーン」「サステナブル・マニュファクチャリング ゾーン」「デジタル・エコシステムズ ゾーン」などで構成されており、多様な出展者が集っていました。
関西の注目スタートアップ、フツパーも出展していました。ミライフ西山が事務局長を務めるNPO法人生態会でも、フツパーを取材しています。
自動車業界の最新技術から各国の産業政策まで、幅広く体感
トヨタ紡織が開発したデジタルコンテンツバスの乗車体験では、セントレア島を周遊しました。このバスは、車内の窓や壁、天井に映像が映り、乗客属性や位置情報に合わせた映像や音声、座席の振動、風や匂いなどの演出が体験できます。セントレア空港や地元・常滑市の案内、みそかつの名店「矢場とん」の匂い付きデジタル広告などで、愛知県らしさを満喫しました!トヨタ紡織は広告媒体やアトラクションとしての活用を提案しており、公道での実証実験も進んでいるそうです。
日欧コラボのステージセッションも数多く開催されており、私の参加したDAY2には、日本駐在のポーランド、ベルギー、ケベックの政府担当者が貿易・投資について語るパネルセッションがありました。自動車・製薬・機械など製造業の進出に加え、様々な事例で日欧の多面的な関係が語られていました。
例えば、三菱商事と仏Colas Railなどによるフィリピンでの地下鉄事業、豊田通商とフランスの商社・物流企業によるアフリカでの事業展開など、日仏企業の共同プロジェクトが世界中で進んでいること、ベルギーは洋上風力発電が盛んで、日本企業とも多くの事業連携があることなどを知りました。また、ダイキンはポーランドで大規模な工場を新設中で、今年夏から稼働予定だそうです。昨年行ったパリでは、街中でダイキンのエアコンを頻繁に見かけ、関西企業の活躍に嬉しく思ったことを思い出しました。
”選択と集中”でIT大国に!ケベック州政府の政策
ケベック州政府のプレゼンも大変興味深いものでした。ケベック州は世界第3位のビデオゲーム産業をはじめ、AI ・レーザーなどIT産業が世界的に有名な地域です。このような IT産業の成長は、ビデオゲーム産業に絞った大胆な優遇政策を1990年代から実施し、世界的なゲーム企業の誘致に成功したことが起点となっているそうです。ケベック州政府がビデオゲーム産業の社員給料を一部負担するといった効果的な政策は、その後、他の産業にも広がり、プログラマー給料の一部負担、プログラミング教育の無償化など、官主導でのIT産業・人材集積が進み、現在の興盛が実現しました。戦略的な”選択と集中”の素晴らしい成功事例だと感心しました。
日仏をつなぐ女性起業家、SINEORA社今井社長がスタートアップエコシステムに関するセッションをモデレート
昨年、VIVATECHでご一緒したSINEORA社の今井公子社長も、SMSの企画・運営に深く関わられており、開催期間中、今井氏はプレゼンにモデレーターにと大活躍でした!
今井氏がモデレーターのパネルセッションの一つ、、「地方発のスタートアップエコシステムづくりと地域創生」は、三井不動産(株)光村圭一郎氏(新規事業担当/BASE Q運営責任者)と、KDDI(株)江幡智広氏(経営戦略本部 副本部長)と今井氏による、地方での新規事業創造に関する率直な意見交換でした。聞き応えがあり、共感する点も多かったです。
2023年に発足した北海道スタートアップ・エコシステムの新体制「STARTUP HOKKAIDO」で戦略担当を務める光村氏は以下のように語っていました。
北海道は宇宙、農業、エネルギーにビジネスチャンスがある。私たちが札幌でやっているのは、その課題に刺さるスタートアップを、東京を含む世界中から連れてくるということ。スタートアップがいない場所に、スタートアップはつくれない。地域の方を育成し起業させるのは、現実的な課題解決策ではない。
世界中のスタートアップと短期的な成果を創出し、地域のカルチャーを長期的に変えていくことを目指しているそうです。そのためには、地域特有の課題を探し出し、特化することが必要不可欠だとも話されていました。どこの地域にもある課題の解決は”ローカルソーシャルグッドビジネス”が担い、その地域にユニークな課題に、既にソリューションを持つスタートアップが挑むという棲み分けは、説得力がありました。
ケベックでも北海道でも、「全方位やります!」ではなく、短期で成果を出すために絞り込むという共通点がありました。限りあるリソースをどこに配分するかは、常に重要な視点です。ミライフの顧客企業のご支援の現場でも、「ターゲットは誰かを決めましょう」「何からやるか考えましょう」といった”選択と集中”に関する問題提起は、意識して行うようにしています。
また、このセッションでもう1点、深く共感したのは、外部の支援者は”よいコネクター”になるべきだという話でした。例えば、農家の方とスタートアップを直接つないでも、なかなか会話が成立しません。三井不動産やKDDIでは、地域支援の経験豊富でマーケティングやビジネス開発のセンスを持った人材を配置し、”よいコネクター”として通訳することを実践しているそうです。
SMSでは、
「フレンチテック」著者 林薫子さんともお会いしました。献本いただいた「フレンチテック」は、林さん、今井さん、そして日経新聞の上田敬さんの共著です。フランスの「フレンチテック」政策の全容、日仏のスタートアップ現状など、広範な内容をわかりやすく、事例豊富にまとめられており、”一気読み!”の面白さでした。
「フレンチテック」共著者の御三方とは、昨年のVIVATECHを通して知り合い、その後も情報交換をしたり、今回のSMSでは実際にお会いしたりと、よい関係を築いています。自ら動き越境することで経験や見聞を広げ、新たに出会った方々と連携し、それをミライフの強みに変えていく、そんな循環を心がけていきたいです。