スタートアップの祭典、パリの「VIVA TECH」:(海外視察 Part2)

2023年6月8日~20日、イギリスとフランスに滞在しました。海外視察Part2では、ヨーロッパ最大のスタートアップの祭典「Viva Technology 2023」が開催されていたフランスのパリ訪問についてご紹介します。

Part1のイギリス編はこちら

今回の訪問は、西山が事務局長を務めるNPO法人生態会が、視察ツアーを将来行うための準備が目的です。フランスの状況を理解するために、JETRO PARISや、日仏のオープンイノベーションに詳しいSINEORA(シンノラ)社、またパリに住む方々にお話を聞きました。

フランスの政府主導で始まった、French Tech

日本の方はスタートアップというと、アメリカ、特にシリコンバレーを思い浮かべるのではないでしょうか。確かに最も大きなスタートアップ環境があるのはアメリカですが、実はフランスも今、とても勢いがあるのです。

フランスでは2013年から、主にデジタル分野のスタートアップを育成する「フレンチテック」を、官民で推進しています。新技術の実装や資金提供、世界展開の支援などを主に行っています。なんとすでに、ユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の未公開企業)が28社も出ているとか(日本は6社)。フランス政府は、2025年までにユニコーン25社創出することを目標としていましたが、「2030年までに100社創出」に上方修正するほどになっています。

大企業がスタートアップの顧客になって、成長を支援

2016年からパリで開催されているVIVA TECHNOLOGY(ビバテクノロジー)は、欧州で最大級のスタートアップイベントです。政府や大企業が主導して、自社と関わりのあるスタートアップと共に出展しています。LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)やロレアル、LaPoste(フランスの郵政公社)などの大企業が、スタートアップの顧客となり、先端技術の実用化を進めています。今年のイベントは、174か国から15万人強の参加者が集まったそうです。マクロン大統領を始め政府要人も来場し、スタートアップ育成にかける政府の熱意を伝えていました。2024年のパリオリンピック開催を見据え、「スポーツ」のテーマでパビリオンを拡張し、スポーツ関連の新技術が多数展示され、パリ市五輪担当副市長が登壇してスポーツの未来を語っていました。

賑わう会場。入場するにも、かなり待ちます
パリ市五輪担当副市長ピエール・ラバダン氏も登壇して、オリンピックについて登壇
パリオリンピックキャラクター(大阪万博の、ミャクミャクを思い起こさせる?)

色鮮やかなブース、洗練された展示会場

私は日本でも、東京ビッグサイトやインテックス大阪などの展示会によく行きます。日本では、個々の企業がそれぞれ主張して、全体にごちゃごちゃした印象を受けることが多いです(日本の街並みも、新旧の建物、和風・洋風など、無秩序に展開されていますね)。しかしVIVA TECHでは、全体的な色やトーンが注意深く配置され、統一感が見られました。パリの街並みも建物の高さや色などの規制が厳しく、景観保護がされていて、全体的な調和があります。さすが、美の国。ブランドを守ろうとする、マーケティングセンスをあちこちに感じます。

ラウンジとして提供されているブースもオシャレ

ブースに立ち寄って説明を聞いても、連絡先をしつこく聞かれることはありません。どの企業の方も丁寧に説明をしてくれますが、「またご興味があればどうぞ」とあっさり終わります。ただ、日本の展示会でよくある、おみやげやノベルティーが無いのは、ちょっと残念。ルイ・ヴィトンのブースなど、期待したのですが・・・しかし出展していた日本企業や韓国企業は、スティッカーやエコバッグなどをくれました。アジアのお土産文化でしょうか。

華やかで色合いも楽しいブースの数々
スタートアップが事業を発表(ほとんどが英語)
LaPosteの封筒自動仕分け機の説明を聞く

LVMHグループのオープンイノベーション

さらに色鮮やかで凝ったブースに目を引いたのは、LVMHグループ。こちらは、世界中から自社と組めるスタートアップを募集しています。2023年は、1300社以上の応募があったそう。その中から18社を選考し、パリへ招待してブースを共に出しています。展示期間中に授賞式を行うなど、スタートアップの知名度向上にも貢献しているようです。一方、老舗ブランドであるLVMHが、先端のスタートアップの技術を取り入れてオープンイノベーションを目指すというのは、企業イメージの向上にもなるのではないでしょうか。特に、梱包材の少量化や物流の効率化などを目指す様々な技術を取り入れようとしており、SDGsへの強い意志を感じました。

こちらは、LVMHのカテゴリー部門(オペレーション)で受賞した Living Packets社。再利用可能で、頑丈・安全に追跡できる郵送ボックスを開発提供しています。私たちが話を聞いたのは授賞式前日でしたが、「We will win (私たちが受賞するわ)!」と言っていました。

有言実行!おめでとうございます。

今年の注目テーマは、生成AI

どのセッションでも何らかの言及があったのが、「生成AI」の活用についてです。ChatGPTをはじめとする生成AIは、これからの社会をどう変えるのか。ゲストとして登壇したSalesForceの創業者マーク・ベニオフ氏も、「信頼性を保ちながら生成AIの技術を活用し、CRMをより効率的に運用し、生産性をあげる準備をしている」と述べていました。

ゴッホと話ができるスタートアップのAI画像

上の写真の左側は、シンノラ(SINEORA)代表取締役の今井公子氏。今回のイベントの背景や見どころなど、詳しく説明いただきました。フランス語・英語・日本語を自由自在に操って、通訳や解説をされる姿は、カッコいいの一言!!日仏のオープンイノベーションを進め、バリバリ働いておられますが、とても面倒見が良くて、助けていただきました。詳しいインタビューもする機会がありましたので、別途ご報告しますね。

女性起業家の少なさは、フランスでも課題

男女平等が進んだように見えるフランスですが、日本と同様まだ課題はあるようです。女性起業家の数が少ない、投資を受けにくいなどの状況を改善するために、イベントのハイライトとして女性起業家に特化した授賞式がありました。女性首相のエリザベット・ボルヌ氏が、授賞式に来ていました。しかしこの方のスピーチはほとんどフランス語だったので、内容が理解できず残念でした。大学時代はフランス語を専攻していたので、自分が情けないのですが・・・その頃よりフランスでも英語が通じる人が増えたものの、フランス語が分かればさらにコミュニケーションが深まります。

女性起業家のアワード

政府と国がスタートアップを育てる仕組みは、日本としても参考になるものでした。今年は日本としての出展はなく、韓国やインドの国を挙げての出展が目立ちました。2024年はぜひ、日本としての出展ができることを期待します。

私にとっては、大学卒業旅行以来のパリです。美しい街並み、歴史と文化、美味しい料理の数々、コロナで4年ぶりの海外の滞在は素晴らしいものでした。街中にある、普通のパン屋さんの、普通のクロワッサンの美味しさは感動もの。

とはいえ、円安による物価高(ランチでも3000円くらい必要)、スリの多さなど治安の悪さ、言葉や習慣が分からない、など海外では常に緊張します。最後に泊まったアパルトマンでは、鍵が開かずに半日閉じこめられるという災難にも遭遇し、その際の部屋代は、2カ月たった今でも交渉中で、まだ戻ってきません(涙)。

しかし、そんな海外で無事に目的地にたどり着き、課題を一つ一つこなすと、充実感を覚えます。生きているって感じです。日本の良さを再認識することも含め、毎日が発見の連続でした。

視察前後で、情報発信

帰国してからは、報告会をする機会を頂きました。JETRO大阪にも結果を伝え、コワーキングオフィスTHE DECKでは、報告会イベントを関係者と共に開催しました。フランスのスタートアップ環境について、その育成方法やブランド作りについてなど、新たな世界をお伝えできれば幸いです。

大阪のコワーキングオフィス THE DECKでのイベント

 

参考資料:

日本経済新聞 2023年3月9日朝刊「フレンチテック」に学べ 仏振興策10年、「ユニコーン」日本の4倍
France 2030: un plan d’investissement pour la France de demain

 

ミライフは、独自の技術やサービスを持つ中小企業・スタートアップをマーケティングで支援します。英語対応も可能です。

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